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第227回 民間療法について

2018年02月12日

「民間療法」というのは、古くから民間で見出され伝承されてきた方法によって行う治療法のことです。戦前の昭和期から広く使われるようになった言葉で、通常医療に含まれない「療法」群を指すもので、健康術(体制の容認しない医学システムを用いた健康法で、一つの体系を持っているもの)や健康法(健康術よりずっと単純なもの)、呪術的療法をその内容とします。

日本の民間療法を民俗学の観点から見た場合、古代には巫医・僧医など医学知識を有した宗教者が医療行為を行っており、民俗学の観点からは、次の4種類の要素に分類可能です(ただし、実際には複数の要素にまたがるものも多い)。また、中には梅干を毎食食べると健康が増進するとか、臍に貼ると船酔い・車酔いに効くといったように予防保健思想を含むものもあります。今日でも「無病息災」を神社仏閣に祈るという形で信仰と医療との結びつきの残滓が残されています。

1つ目は「物理的療法」です。物理的療法摩擦・圧迫・刺激・加熱・加湿・冷却など、物理的な力や温熱冷熱によるもので、薬物的療法(風邪や喉の痛みに生姜をおろしたものを服用したり布に伸ばして当てる)や信仰的療法・呪術的療法(神社・仏閣の湧水で目などの患部を洗ったり、灸治に適切な日が存在すること)など組み合わせて行われる場合もあります。発熱を感じたら患部を冷やす、傷口から血が出ているのに気づいたら傷口を押さえたり舌でなめる、体内に違和感を持ったらその付近を擦ったり揉んだりするなどの行為も物理的療法の初期的な段階と言え、また、鍼灸をはじめ、温泉・サウナを含めた風呂などへの入浴行為やしゃっくりの時に息をせずに冷水を一気に飲むという慣習もその一種であると言えます。

2つ目は「薬物的療法」です。いわゆる草根木皮の類を用いていわゆる「民間薬」を服用することで、現代において未だに科学的な薬効の成分・原理が明らかにされていない場合でも、現実に効力の存在を認めざるを得ない事例もあります。胃痛に熊の胆やセンブリの煎汁(煎じたもの)を用いたり、下痢や消化不良にゲンノショウコの煎汁を用いたり、蜂刺されに小便や里芋の葉の汁を塗る等というものです。また、夏バテに鰻を食べたり、スッポンの血を飲むという慣習もその一種であると言えます。

3つ目は「信仰的療法」です。神社・仏閣に赴いて祈願したり、加持祈祷や百度参りを行うもので、特定の病気などに対する霊験が伝えられる神社・仏閣および関連する事物の存在(地蔵尊)などが知られ、巣鴨のとげぬき地蔵のように観光名所となっている場所もあります。また、古くは銭湯や温泉に神仏が祀られている例もありました。

4つ目は「呪術的療法」です。接触あるいは類似物を用いることで傷病を治癒させようというものです。肺結核に石油を飲む、ものもらいに藁の芯を目の前で結んで燃やす、喉に刺した魚の骨を除くのに魚網を頭から被る、紙の人形(ひとがた)で身をなでて穢れを移して川に流すと病などの災厄から避けられるなどが知られています。これらには科学的根拠がないものが多いですが、前述のようにシャーマンや祈祷師が巫医としての活動は長い歴史を有しています。また、律令制の典薬寮においても医学的な治療を行う部門と並んで道教医療の一環である呪禁を専門に扱う部署が存在していました。なお、今日においても風邪を他人にうつせば治癒するという慣習も風邪という形で露出した穢れを他者に移すという呪術的な意味を含んでいると考えられています。

ここに挙げた4つの分類は、あくまで民俗学的にみた場合の分類なので、どれも伝承や言い伝えに関わるものですし、その土地や地域によって違ってきます。パワースポットと言われる場所も、「民間療法」の一つと言えるかもしれません。自分に合ったご利益のある神社やお寺を巡ったり、自分の地域のそういう場所を見つけていくのも楽しいと思います。ちゃんとした治療法じゃなくても、民間療法というのは自分でできる治療法です。科学的に実証できないからと言って侮ってはいけないものなのです。

岡田

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