ページの先頭へ

第530回 イドラ 「誤解にはパターンがある」

2024年03月05日

イギリスの哲学者フランシスコ・ベーコンは「物事の正しい知識は実験や注意深い観察から得られるものだ」とする考えである経験主義の哲学者です。

ベーコンは正しい知識を導くことにおいて観察と実験が一番大事と考える一方で、人間の認識と言うのは誤解と偏見であふれており正しい結論が導けないことが多々あります。

では人間が正しく結論を出すにはどうした良いかという事にベーコンが述べたのは、誤解の種類には4つのイドラ(偶像)があるというものでした。

 

・種族のイドラ(自然性質によるイドラ)

いわゆる錯覚の事です。月が高いと小さく見えるが建物の近くまで低くなると大きく見えたり、甘いものを食べた後に果物を食べるといつもより酸っぱく感じたりする事です。

 

・洞窟のイドラ(個人経験によるイドラ)

自分のうけた経験や教育の狭い物差しで物事を決めてしまう誤解です。例えば一度食べた魚がたまたま口に合わなかっただけで、自分は魚類全般が食べれないと思い込むことです。

 

・市場のイドラ(伝聞のイドラ)

言葉の不適切な使用によって起こることです。言い換えれば、噂や伝聞を真実だと思って惑わされることです。例えばどこか出所か分からないSNSの情報をさも真実のように他人に拡散してしまう事です。噂と言うのは人に伝わるたびに噂し甲斐があるように、それが故意的でなくても婉曲されていくものです。

 

・劇場のイドラ(権威によるイドラ)

有名人や自分より偉大な人の主張など権威や伝統を鵜吞みにしてしまう事によって生じる偏見の事です。例えばテレビなどのメディアに出ている有名人が主張していることだから、違いないんだと無批判に信じ込んでしまう事です。

 

これら4つのイドラを知っていると、まず自分が主張する時の根拠となる認識が4つのイドラによって歪められてはいないか。次に他者に反論する際に主張する時の根拠となる前提が4つのイドラによって歪められてはいないか。と確認することができます。

 

例えば、とある子供が魚は刺身の切り身のまま海を泳いでいるのだと主張していたという話があります。その主張の根拠というのがスーパーで売られている「魚」と言われて買うものが刺身の切り身の状態だからです。

これこそ洞窟のイドラであり、その子供にとって「魚」は切り身で泳いでいるのもいるし、開きで泳いでいるのもいるし、通常の状態で泳ぐ種類もいるという認識なのです。

 

ベーコンによると、人間の知性というものはこれらのイドラによって一旦思い込むと、全てのことをそのイドラと整合性が合うように作り上げてしまう性質を持っていると考えられています。このような思い込みは、いくらその考えに対しての反例が多く表れても、それらを無視するか軽視しがちになってしまうという事です。

よって、ベーコンはこの4つのイドラを取り除いて初めて人は正しい知識を導けると説いたのです。

 

藤浪

記事を共有するShare on Facebook
Facebook
Tweet about this on Twitter
Twitter
Share on LinkedIn
Linkedin

過去の日記

TEL
0562-93-5561

株式会社 藤榮

〒470-1144
愛知県豊明市阿野町稲葉74-46

TEL:
0562-93-5561
FAX:
0562-93-0211

kitchen@fuji-advance.co.jp