ページの先頭へ

第144回 世界の生涯学習~イギリス~

2017年01月15日

生涯学習という考えはヨーロッパから広まってきました。特にイギリスは「ゆりかごから墓場まで」の生涯にわたる継続的学習を指し、教育と訓練、義務教育と義務教育後の教育、教育機関での学習と職業訓練といった全てを包括する概念を持ち、生涯学習が積極的に展開される「学習社会」の実現を目指して、高等教育、継続教育、成人教育、職業・技能訓練などの施策として展開しています。

もともとイギリスでは非職業的一般教養教育といわれる職業技能の習得ではなく、精神を豊かにする教養の獲得こそが真の教育であるとされていました。しかし、第二次世界大戦後の国際競争力の低下による慢性的な経済危機や産業構造の急速な変化によって高い失業率に悩まされると、その構図は変化しました。非職業型・教養型の学習機会は縮小され、職業教育が重視される傾向が顕著になったのです。1986年には職業資格を整理し、5段階からなる全国職業資格(NVQ)が導入されました。また、1997年にはアカデミックな学力を評価する教育資格と職務遂行能力に関する職業資格を統合した包括的な資格体系として全国資格枠組み(NQF)が構築され、さらに2000年代になり欧州資格枠組み(EQF)がスタートするようになりました。そして、資格体系が整備されると同時に2012年には全国キャリアサービスが開始され、個人向けにキャリア構築に関する情報提供や相談が実施されるようになりました。この政策の背景には、持続的な職業スキル向上がイギリス経済の競争力を回復する上で重要であると同時に、教育へのアクセスを広げることが、失業者やその他排除された集団に新しい社会的経済的な機会を用意するのに役立つと考えられているからという理由があります。実際、1870年代に始まった大学教授陣を全国各地に派遣して一般民衆を対象に巡回講義をした大学拡張や、労働者教育協会(WEA)が行った労働者の学習要求に基づくように学習方法、クラスの自主管理、学習内容の主体的要求などを確立させたチュートリアル・クラスなど、働く人々に対して高等教育を提供することはイギリスの伝統として現在まで受け継がれています。

昨年イギリスはEU離脱を決定し、EUレベルにおける生涯学習の政策から直接の影響を離れ、新たにイギリス型の路線を模索していくことになりました。古くからの民族問題や移民問題に対し、今後どのように向き合っていくのか、今その真価が問われています。

岡田

記事を共有するShare on Facebook
Facebook
Tweet about this on Twitter
Twitter
Share on LinkedIn
Linkedin

過去の日記

TEL
0562-93-5561

株式会社 藤榮

〒470-1144
愛知県豊明市阿野町稲葉74-46

TEL:
0562-93-5561
FAX:
0562-93-0211

kitchen@fuji-advance.co.jp