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第155回 世界の生涯学習~ドイツ~

2017年03月20日

ドイツの生涯学習の特徴は、フォルクスホッホシューレという公立の施設を中心に、幅広い学習プログラムが提供されている点です。16歳以上なら誰でも参加でき、1日限りのワークショップから数年にわたる資格取得を目指す継続的なコース、宿泊型のプログラムも提供されています。フォルクスホッホシューレが提供するプログラムは、英語やフランス語などの語学や健康志向を反映したエクササイズから、職業上必要とされる資格取得のための講座、そして環境問題や政治的課題などに対応した話し合いの場、宿泊型プログラムまで多岐にわたります。政治や社会問題、環境保護に関する講座も多く設置され、一般市民の関心の高さと共に市民の政治参加を促す機関としても機能していることが分かります。

ドイツでは他のヨーロッパ諸国と同様、教会を中心に聖書をテキストとした識字教育が各地で展開されてきました。宗教改革を牽引したマルティン・ルターは、ヘブライ語や古代ギリシア語から庶民の言葉であるドイツ語に聖書を翻訳し、教会での説教もドイツ語で行いました。それはドイツ庶民にとって新しい語彙を獲得する絶好の機会でした。しかし、学習機会が本格的に成人一般に拡大したのは宗教革命後のことでした。17世紀から18世紀のヨーロッパにおいて啓蒙主義と同時に普及する、「人格の形成」を重視する教養は、聖書ではなく詩や文学をテキストにして外国語の読み書きや表現を覚えたり、異文化を理解するという教養主義でした。ドイツの場合、イタリアやフランスに比べると100年近く遅れて始まりましたが、ドイツの教養主義は書物と議論を好み、理性に照らして思案する「教養市民層」と呼ばれる成人を生み出しました。そしてこの時期から講義形式の学び方を批判し、学習者同士の「対話」を重視するなど、学び方についての探求が始まっているのもドイツの生涯学習の特徴といえます。

移民・難民の問題はヨーロッパ諸国においては大きな課題だと思います。ドイツも例外ではなく、多文化社会でいかに移民の社会参加を実現できるのかが課題となっています。2006年に連邦政府は、「国民統合計画」を発表しました。ドイツ人と移民の間で、また移民間の軋轢を抑制し、社会参加を促進するために子供や若者に対する教育プログラムに加え、その親に対する包括的な支援システムが実施されているのです。プログラムやシステムに頼ることも大切ですが、頼りすぎず、それを基盤として柔軟に移民の問題と向き合っていくことが大切なんだと私は思います。

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