日本酒好きなら誰でも知っている「獺祭(だっさい)」。
日本酒業界が低迷しているなか、獺祭は品薄続出するほどの大人気の日本酒であり、現在は日本国内にとどまらず世界に日本酒の文化を拡げています。
造っているのは山口県岩国市の草深く小川の流れる山あいにある旭酒造です。
杜氏を置かない蔵元としても知られています。
獺祭の名前の由来は旭酒造の所在地である獺越(おそごえ)から一字をとって銘柄を「獺祭」と命名されました。
獺祭とは、獺(かわうそ)が捕らえた魚を岸に並べる習性があり、その姿はお祭りをしているようにみえるとか。その様子から詩や文を作る時、多くの参考資料を広げちらす事をさします。
日本文学に革命をもたらした正岡子規が自らを獺祭書屋主人と号したように、「酒造りは夢創り、拓こう日本酒新時代」をキャッチフレーズを掲げ、「獺祭」というブランドが生まれました。
以前は”普通酒”を地元で売っていたが、売れてなかったそうです。
「なぜ売れないかを突き詰めていくと、求められている酒とは『酔うため、売るための酒』ではなく、『味わう酒』ではないのか。そのためには酒の質を追いかけていくしかないんじゃないか。それが大吟醸酒だった。」ということです。
吟醸酒は玄米の表面から40%以上削り取り、残した60%以下の白米を原料に用いて、低温、長期間発酵させ、特別に吟味して製造した酒。普通より高度な醸造技術を要求されます。大吟醸酒になると、50%以上も削り取ります。
しかも獺祭は酒造好適米の「山田錦」しか使わないという徹底ぶりです。
獺祭はさまざまなラインナップがありますが、特に最高品質と高く評価されているのが「磨き二割三分」シリーズです。精米歩合を23%にするということはお米を77%削るということで、これにはかなりの時間と手間がかかります。
まさに「量より質」を徹底しています。
大人気の獺祭も今年の新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、海外からの発注はキャンセルが続き、飲食店の営業自粛等により5月には売上40%になりました。
そこで旭酒造は酒米の生産農家への発注量を減らさないようにするために、「山田錦」を食用米として販売をはじめました。全国の獺祭取扱店や旭酒造の通販サイトでも販売しています。
さらに消毒用アルコールが足りないということで、「山田錦」を発酵・蒸留して、アルコール度数72%のエタノールを生産、出荷しています。
そして7月から9月30日までの飲食店限定の商品を発売しています。
「活気を失くした飲食店を盛り上げる、ひとつのきっかけになれば」という思いだそうです。
旭酒造の現社長は「街に出る機会も外で飲む機会も減少するだろうが、外食の機会がこれまで以上に特別な”ハレ”の機会になるのではないか。街に出た際”せっかくならいいものを口にしたい”という消費者は増えるはず。ピンチをチャンスにすべく、原点を大切にした提案を続けていく」といわれています。
「今はコロナだから仕方ない」だとか「じっと今を耐えるしかない」ではなく、自分の信念はブレずにその時代に合わせて違う視点で新しいことに挑戦することは大事だと思いました。
櫃田