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第321回 善く戦う者は、勝ち易きに勝つ者なり

2019年09月15日

古のいわゆる善く戦う者は、勝ち易きに勝つ者なり。

ゆえに善く戦う者の勝つや、智名もなく、勇功もなし。ゆえにその戦い勝ちて違わず。違わざる者は、その措くところ必ず勝つ。すでに敗るる者に勝てばなり。ゆえに善く戦う者は不敗の地に立ち、しかして敵の敗を失わざるなり。このゆえに勝兵はまず勝ちてしかるのちに戦いを求め、敗兵はまず戦いてしかるのちに勝ちを求む。

昔のいわゆる戦上手と呼ばれた人は、勝ちやすい状況で勝つべくして勝ったのである。

戦上手の人は勝利しても、智謀も評価されず武勇も評価されない。勝つべくして勝っているだけである。勝ちが確実な者は、すでに敗れる定めの敵に勝っているのである。だから、戦上手は、絶対負けない条件を整えた上で敵のスキを逃すことがないのだ。そのため、勝利する軍隊は戦う前にまず勝つための条件を整えてから戦いをはじめるが、負ける軍隊は戦いを始めてから何とか勝とうとするのである。

古来より数多くの戦いがありましたが、分析してみると、弱者が強者を倒したケースは非常に稀です。孫子も勝って当たり前の状況を作り出すのが、優秀な兵法家と考えていました。

孫子は「善く戦う者は、勝ち易きに勝つ者なり」の一説で、敵には決して負けない万全の態勢で戦いに臨み、かといって力押しをするのではなく、敵が焦って隙を見せた時に逃さず叩く。それこそが損害を最小限に抑えて勝つことで「戦上手と呼ばれる人は勝ちやすい状況で勝つべくして勝ってきた」と説いています。

印象に残るような戦いをする人が戦上手ではないということを、「印象に残るような仕事をする人が有能なビジネスマンではない」と読み替えると、現代のビジネスシーンでも通用するように思います。

9/16 新美

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第320回 朝顔の花一時

2019年09月08日

朝顔の花が開くのは、ほんの一時だけです。それ以外は、美しい花を開きません。

これは、人間が生きていく上でも、同じようなことが言えます。人生において、花開く時は、そんなに長くありません。ある期間、花を開くと、その後は枯れ行くのみです。

ほんの一時、美しく花開くために、とても長い時間を準備に費やします。

朝顔であれば、種から芽が出て、葉を広げ、つぼみができて、そうしてようやく花開く準備が整うのです。人間も同じです。花開く短い期間のために、その瞬間のために何十年と努力し、少しづつ成長していくのです。ですから、なかなか花開かないと嘆く必要はありません。みな、花咲く運命を持った種なのです。

もちろん、大きな花を咲かす種、小さな花を咲かす種、鮮やかな花を咲かす種、地味な花を咲かす種などいろいろあります。でも、いつかは花開くのです。

下積みが長くても、嘆かないようにしましょう。また、すでに花を咲かせた人は、永遠に花咲いた状態が続くと思わないようにしましょう。

いつかは、枯れて行くのです。

寺澤

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第319回 「価格」と「価値」

2019年08月31日

「価格」というのはモノにつけられた値段なので、安ければ安いほどうれしいものです。

対して「価値」というのは、モノから自分が受けた影響を指すので、高ければ高いほどうれしいものです。

「価値」が高ければ「価格」はあまり関係のないものになります。

逆に「価格」が安ければ「価値」が上がるかというと、そこまで変わりません。

「安いけどそれなり」の実感では、「価値」は上がりません。

「安いのにほんとこれはすごい」であればそれに見合う、もしくはそれ以上の「価値」が発生します。

自分の身の回りを「価格の安いモノ」でまとめたいですか?

それとも、「価値の高いモノ」でまとめたいですか?

自分の周りの人も含めた「みんな」はどちらを選びたいでしょうか。

自分が扱うモノの価値を意識するようにします。

価格は後から考えればよいのです。

時代とともに価値は変化していきます。

しかしお金は必ず価値があるほうに流れるようになっています。

価値は人によって感じ方が変わるものです。

「自分にとっての良し悪し」が価値観となります。

「価格が高いか、安いか」ではなく、「みんなが買っているから」ではなく、

自分にとって「価値が高いか、低いか」で判断して、本質を見極めることが大事です。

櫃田

 

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第318回 彼を知り己を知れば百戦殆からず

2019年08月25日

敵の実力や現状をしっかりと把握し、自分自身のことをよくわきまえて戦えば、なんど戦っても、勝つことができるものです。なにか問題を解決するときも、その内容を吟味し、自分の力量を認識したうえで対処すれば、うまくいくものです。

情報化時代といわれて久しいものがあり、「敵を知る」ための情報を入手するのにはたいへん便利な時代となりました。入手したい資料はネットやデーターベースのなかに組み込まれていることが多く、いながらにして一通りのものは集められます。

注意しなければならないのは、情報が多様化して、本質がつかめないこと、それにマスコミなどによって報道されたものが真実なものとして一人歩きしているということです。「彼を知る」ということは、表面に現れた「通り一遍の情報」でなく、「高度な情報」をいかに多く集めるかということです。

しかし、いくら「精度の高い、価値ある情報」を収集することができても「己を知る」ということができていない場合には、「戦うごとに必ず敗る」という結果に陥りやすいといえます。

「己を知る」ということは、容易なようにみえて、なかなか難しいというのが、筆者の実感です。

自己認識の判断の誤りは、過小評価と過大評価の2つの場合があり、両者とも戦う場合のマイナス要素となります。
過小評価の場合は、積極的に、打って出るべき事態に対し慎重になりすぎて、決定や施策がノビノビになってしまうものです。
自己の実力、自社の実力を過大評価するのはもちろん危険です。
権力者や、実力者といわれる人物が陥る最も大きな民は、「己を知る」ことの不足からくるものです。

本田

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第317回 百戦百勝は善の善なる者に非ず

2019年08月17日

軍を全うするを上となし、軍を破るはこれに次ぐ。旅を全うするを上となし、旅を破るはこれに次ぐ。卒を全うするを上となし、卒を破るはこれに次ぐ。伍を全うするを上となし、伍を破るはこれに次ぐ。

このゆえに百戦百勝は善の善なる者に非ざるなり。戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり。

「百戦百勝は善の善なる者に非ず」は、孫子の兵法で出てくる一節です。

この一節を現代語で訳してみると

軍団を降伏させるのが上策であって、軍団を打ち破るのは次善である。旅団を降伏させるのが上策であって、旅団を打ち破るのは次善である。大隊を降伏させるのが上策であって、大隊を打ち破るのは次善である。小隊を降伏させるのが上策であって、小隊を打ち破るのは次善である。

だから、百回戦って百回勝つのが最善ではない。戦わずして勝つのが最善である。

これが現代語訳になります。

孫子は兵法書ですが、戦って勝つ方法ではなく、まずは戦わずして勝つべきだと説いています。戦えば、たとえ勝ったとしても損害を受けます。連戦連勝したとしても、勝つ度に損害を積み重ねていけば、いずれは疲弊していくわけです。

百戦百勝したとしても、百一戦目で滅亡してしまっては意味がありません。

「真に勝つことは、自らの力を増すことであって、戦いに勝つことではない」ということを「百戦百勝は善の善なる者に非ず」の一節は教えてくれています。

新美

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第316回 約束は遅く、履行は早く

2019年08月11日

約束は、必ず守らなければなりません。なぜなら、社会は約束で成立しているからです。
憲法も法律も約束の集まりです。契約も社会活動も約束の集まりです。
社会とは、約束そのものと言えるでしょう。
守れなければ、信用を一気に失い、社会活動に大きな支障をきたします。たくさんの人間関係を破壊してしまいます。なぜなら、社会活動の根幹は、約束だからです。
約束をきちんと守れば、信用はどんどん高まります。
では、約束を守るためには、どうすればいいのでしょうか。
1. 軽々しく約束をしない
2. 約束をしたからには、迅速に履行する
この二つが大切です。
軽々しく約束をすると、あとで履行できないと分かったときには時すでに遅く、信用を大きく失います。
また、あまりに約束が増えてくると履行が間に合わず、さらには、うっかり履行し忘れるという危険も生じてきます。
約束をしたなら、迅速に履行しましょう。約束がいろいろと増えてくると、履行が時間的に難しくなってきます。
現代においては、時間はお金そのものです。約束の履行は、早ければ早いほどいいのです。
約束の履行が早ければ早いほど、相手は喜び、信用は大きく高まります。
また、守れない約束は、はじめからしないように注意しましょう。

寺澤

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第315回 お金の話

2019年08月04日

お金の話をすると、汚いとかいやらしいとか言われたり、思われたりすると思って控えめにしていたりします。
でも本当は「好き」で「一緒にいたい」はずです。
お金は悪いことをしないと稼げないというイメージがあったり、たくさんお金を稼ぐと警察に捕まるみたいなイメージが先行していているからだと思います。
でもそれはあくまでイメージです。
本質的には誰もが、お金を「好き」で「一緒にいたい」はずです。
「好き」で「一緒にいたい」のならば、それは「家族」と同じ価値があります。
家族のことを「汚い」とか「いやらしい」などと言い、遠ざけたりすることはないと思います。

櫃田

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第314回 他人に期待すること

2019年07月21日

皆さんは、人に期待することや、期待させることって、どう思いますか?

人に期待する気持ちを持ってしまうと、自分がコントロールできない物事に、感情をベットすることになります。人に期待した場合、自分の思っているような行動を他人がとってくれなければ、勝手に傷つくことになるわけですよね。それを避けたいなあ、と思うわけです。この世でコントロールできることは自分の意志と行動だけ、他人の意志や行動を自分の思惑通りにコントロールすることは、絶対に不可能だと考えています。

なので、基本的に人に期待することをしない。人に期待しないという生き方の効能は、何と言っても「他人に振り回されずに、いつでも機嫌よく生きていられる」ということです。誰かや何かに期待する気持ちを捨てると、心が乱れる要素が大幅に減ります。誰かが自分の思惑通りのことをしなくても「まあ、そういうこともあるよね」と受け流すことができるし、何か期待はずれのことが起こったとしても、「そうか、仕方がないなあ」なんて思って、それで仕舞いにすることもできます。

自分の意志や行動さえ、ブレずにコントロールできていれば、後のことはもう、どうなろうが、自然の流れに身をまかせるだけです。極端な話ですが、たとえ明日、この世が終わってしまうとしても、それは私自身にコントロールできないことだから、仕方がありません。誰かがいなくなってしまったり、うまくいかない出来事が起こったり、思いもよらぬ不幸があったとしても、それはそれで、仕方がない。

相手に何も期待しない、期待させない。それによって、たしかに、心を乱されることは減る。でも、同時に、心はどんどん凍っていってしまうのかもしれません。

誰かにがむしゃらに期待して、心を通わせようと踏ん張って、それでもうまくいかなくて、涙を流しながら、心を痛めながら、相手のことを想う。そんな強い関わりを求める願いを、私たちは捨ててしまったのではないか。

なんだか、そんな気がしてならないんです。

本田

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第313回 算多きは勝ち、算少なきは勝たず

2019年07月16日

いまだ戦わずして廟算して勝つ者は、算を得ること多ければなり。いまだ戦わずして廟算して勝たざる者は、算を得ること少なければなり。

算多きは勝ち、算少なきは勝たず。しかるをいわんや算なきにおいてをや。われこれをもってこれを観るに、勝負見わる。

「算多きは勝ち、算少なきは勝たず」の現代語訳

そもそもまだ戦わないうちから作戦会議で既に勝つと確信するのは、五事・七計を基に得られた勝利の条件が、相手よりも多いからである。まだ戦っていない段階で勝つ見込みがないのは、勝利の条件が相手よりも少ないからである。

勝利の条件が多い方は実戦でも勝利するし、勝利の条件が少ない方は、実戦でも敗北する。ましてや勝算が一つもないというのは、何をかいわんやである。私はこうした基準によって戦いの行方を観察しているので、勝敗は目に見えるのである。

これが現代語訳になります。

「算多きは勝ち、算少なきは勝たず」の解説

五事(戦力を検討する5つの基本事項)と七計(戦いの勝敗を決める7つの基準)により、孫子は戦う前の段階で勝敗を予測できました。

彼我の戦力を比較し、自軍が優っているところが多ければ勝ち、劣っていれば敗れるという論理的な考えを二千数百年前に確立していたところに孫子の偉大さがありますが、その場の思いつきではなく、冷静に自らと相手の戦力を分析した後に勝てる算段をして戦いを挑むということは、現代のビジネスでも重要です。

 

新美

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第312回 寄らば大樹の陰

2019年07月07日

大きな木があれば、その陰でひっそりと暮らせば、下に居る小動物など弱い生き物は大樹に守られ、生き延びることができます。

台風などのときでも、雨や風から大樹が守ってくれるので、その陰に寄っている弱い生き物達は難を逃れることができます。

このように、自然界でも、弱いものは強いものにうまく寄り添い、守ってもらっています。

私達もそうです。弱い内は、強いものに守ってもらうことができます。

人間でいうと、組織に入り、守ってもらうということが言えます。

しかし、自分が強くて力があるなら、大樹の陰でじっとしていてはいけません。

自分自身が大樹になれるはずです。

そして、自分という大樹に、たくさんの人達が集まってくるはずです。

いずれは大樹になるけれど、今は弱い存在だという人もいるはずです。

そんな人は、弱いうち、力の無いうちは、強い組織や人の陰で生きていく方がいいでしょう。

そこで、コツコツと大樹になる力を蓄えていく必要があります。

最後には、自分自身が大樹となるべく、その場所を飛び出すというのがいいでしょう。

あなたが弱くて力のない存在なら、 大組織や、力のある人の後ろで生きていきましょう。

あなたが強くて力のある存在なら、大樹となるべく、大きく育っていきましょう。

寺澤

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